本日、プレビュー展がオープンしました!

ついに本日よりギャルリ・オーブにて、プレビュー展が始まりました。
半年近くをかけて、キュレーターの服部浩之氏と17組28名の作家たち、6名のアシスタント・キュレーター、サポートの教職員が対話を重ねてつくり上げた展覧会です。
残念ながら一般公開は叶いませんでしたが、学内関係者のみなさま、ぜひ会場に足をお運びください!

3種類のポスターは本学情報デザイン学科の見増勇介先生によるもの

プレビュー展
2020年12月3日(木)~18日(金)10:00~18:00
於・ギャルリ・オーブ 

学内講評会
2020年12月11日(金)17:00~19:00
ゲスト:浅田彰、竹内万里子、やなぎみわ
於・人間館ラウンジ(カフェ南側) 

プレビュー展特設サイト:https://www.kyoto-art.ac.jp/kuaannual2021/
KUA ANNUAL 公式サイト:http://kuaannual.com/2021
KUA ANNUAL twitter:https://twitter.com/kua_annual

【プレビュー展】作品解説

貞 雄大 SADA Yudai

情報デザイン学科 ビジュアルコミュニケーションデザインコース 4年

都会から田舎に至るまであらゆる場所に存在する三角コーン。貞雄大は、いたって身近で気にもとめない三角コーンにあえて光を当て、様々なアプローチによって捉え直す。1年ほど前から「@lonely_trafficcone」というインスタグラムのアカウントを開設し、街中の三角コーンを撮影・収集し続けている。日常生活にありふれる要素や現象を文化的価値と捉え、身体的にものと触れ合って理解し様々なエクササイズをおこなっている。こうした三角コーンが置かれた街中の環境やその形自体に注目することで、貞は「三角コーン」という一言でまとめることのできないような豊穣さをそこに発見し、表現していくのである。

[文、廣橋美侑(アシスタント・キュレーター)]

山本 友梨香 YAMAMOTO Yurika

美術工芸学科 総合造形コース 4年

この作品のモチーフになっているのは、山本友梨香が生まれ育った大分県津久見市である。そこは、大正時代から現在まで、日本有数のセメント産業が盛んな地域として知られている。作品上部は津久見市の工場地帯に相応しい鋼材で細やかに組まれており、その均衡は保たれている。しかし、やじろべえのように常に揺れつづける本作の構造は、見るものに不安定な印象を与えるであろう。山本は、本作を通じて、自然と人工物に取り囲まれて生きる人々の生活圏を見つめている。

[文、毛利風香(アシスタント・キュレーター)]

R E M A

大学院 美術工芸領域 総合造形分野 修士課程2年

R E M Aは、変化する自然物に対する、影―イメージ―の焼き付け行為について追及してきた。彼女は日々描き続けるドローイングのイメージについて、「世界と私がふれあった時の現象」のようなものだと言う。今回の作品では、ドローイングによるイメージ・オブジェクト、柱、葉の3つの素材を用いている。ドローイングが施された柱と葉を媒体にして彼女は”自分と自分でないもの”について考える。平面作品では、葉の持つ有機的なテクスチャーに施された、人為的曲線とのコントラストを目の当たりにするだろう。平面と空間の構成に取り組んだ本作では、鑑賞者もまた世界と自分―世界でないもの―にふれあうことが出来るだろうか。

[文、楊昕鑫(アシスタント・キュレーター)、R E M A]

飯田 匠海 IIDA Takumi

映画学科 映画製作コース 4年

薄暗い空間に投影される2つの映像は、場面を切り替えながらも、静かに風景を捉え続けている。視点を地面まで低くして撮ったカマキリ、ベランダから眺める電車の往来、あぜ道を気ままに歩く通行人。これらは全て飯田の自宅周辺で撮影されたものだが、どこか懐かしい気持ちにさせられるような風景ばかりだ。
鑑賞者は椅子に座り、見上げるようにして風景を眺める。代わり映えのない光景にすぎないかもしれないが、しかし、わずかに聞こえる環境音を聞きながら、いつかの思い出をそこに重ね合わせることで安らぎを得ることができるだろう。

[文、廣橋美侑(アシスタント・キュレーター)]

高田 美乃莉 TAKADA Minori

美術工芸学科 総合造形コース 4年

ポップ・カラーの土台に埋め込まれた線や塊を、ピンセットを用いてただひたすらに引き抜くことを繰り返す。形やモノを変えながら繰り返される除去作業は、まるで人体の毛穴に溜まった老廃物や毛を摘出しているかのようである。それは一方で、汚い老廃物を見つめるような嫌悪感を感じさせるものの、他方でうまく摘出できたときのすっきりとした快感を伴っている。人の肌感とは程遠い無機物を用いて老廃物の摘出を疑似的に体験させる本作は、多くの人が経験したことのある、こうした相反する感覚を呼び起こさせる実験的パフォーマンスなのである。

[文、廣橋美侑(アシスタント・キュレーター)]

寺田 玲奈 TERADA Reina

キャラクターデザイン学科 4年

寺田玲奈は自身を女性と自認しながらも、課せられた「女らしさ」に囚われている。本作もまた、とある一人の女性が「女らしさ」に囚われ、苦悶する姿を描いている。作中、主人公が女性ものの服を手に持ち、試着するシーンがある。主人公が思う理想から懸け離れた試着室の鏡に映る己の姿を目の当たりにしし、彼女は激しいコンプレックスに襲われる。目を逸らしていた自身を苦しめる「らしさ」を向ける自分の視線と向き合った彼女は、自分の理想は世間が作っている「らしさ」に強く影響を受け形作られてきたということを初めて自覚する。そして、植え付けられた自責の苦しみを少しずつでも解いて行けるようになるのだ。映像を取り囲む薄いカーテンは、その向こうから誰かに見られているような感覚を見るものに与え、作中の女性が苛まれている視線を観客に追体験させる。

[文、廣橋美侑(アシスタント・キュレーター)]

柯 琳琳 O LamLam

美術工芸学科 日本画コース 1年

柯琳琳が生まれ育った香港には、葬儀文化において紙人形に霊が憑依するという考えがある。本作品において彼女はこうした考えに従い、自らの魂の一部を憑依させた紙人形をメディア=媒体・依代として他者と関わろうとする。コロナ渦において「握手、ハグ、キス」といった身体接触が憚られるようになったし、彼女自身、渡航制限によって来日が困難な状況に置かれた。こうした状況が人間関係の構築にどのような影響を与えるのか。香港から日本への旅と日常のレポートによって構成された本作が取り組むのは、こうした問いである。

[文、楊昕鑫(アシスタント・キュレーター)]

長田 綾美 NAGATA Ayami

大学院 美術工芸領域 染織分野 修士課程1年

天井から吊るされた幅4.7メートル、高さ2.3メートルの織り物は、長田によって織られたものだ。本作を織りあげている紐は、長田がフリー・マーケットアプリで購入した古本の『広辞苑』を切り取り、紐状につなげたものである。紐の所々には蛍光ペンの線がひかれていて、かつての持ち主の気配を感じさせる。
紐を織る工程は、結ぶ、絡める、ほどく、束ねる、組む、縛る、掛けるという行いからなる。その行為は、人と人の関わりを表す言葉でもある。長田は、古本の紐を織ることで、かつての持ち主の痕跡をたどり、思いを馳せる。

  [文、吉良穂乃香(アシスタント・キュレーター)]

栗林 勝太 KURIBAYASHI Shota

大学院 建築領域 修士課程2年

人間は、身体的経験に基づいた構造を非生命へと隠喩的に投射することにより、事物を理解する。それは言語表現や言語習得の過程にも影響する。このようなメカニズムを認知言語学において「イメージ図式」という。「イメージ図式」は哲学者マーク・ジョンソン『心のなかの身体』(菅野盾樹、中村雅之訳、紀伊國屋書店、2001年)に登場する言葉である。イメージ図式に基づく世界の理解の仕方があるというジョンソンの仮説に基づき、栗林勝太は16パターンの平面ダイアグラム、16パターンの立体ダイアグラムを通してその援用を試みている。

[文、毛利風香(アシスタントキュレーター)]

新開 日向子 SHINKAI Hinako

美術工芸学科 写真・映像コース 4年

高校時代から主にインスタレーション作品を制作をしてきた新開日向子。今回は新たにLEDディスプレイを用いてインスタレーションを構成する。様々な要素が散見されるこの作品は、蓄積された日々の記録をスキャンを用いたドローイングとして編集し、それらを元とした複数のレイヤーを展示空間に落とし込んだものである。以前から虫に関心を持ち、灯火採集なども行った経験を持つ彼女は、今年5月にこの作品のモチーフの1つとなっている蜘蛛と出会った。その蜘蛛と共に生活をしていく中で抱いた愛憎相半ばする感情と共に、このイレギュラーな日常を作品として展開する。

 [文、原田桃望(アシスタント・キュレーター)]  

▶︎作家によるスキャンドローイング

御村 紗也 MIMURA Saya

大学院 美術工芸領域 油画分野 修士課程1年

「日に照らされてできた影、風に揺れる木々の音、肌で感じる温度、空気の香り」(1)。御村紗也は何気ない日常の光景を収めた写真を元にドローイングを行い、そのドローイングをシルクスクリーンやペインティングによってキャンバス上に再現する。作品の表面は、樹脂を用いた光沢面や下地材の粒子が粗い面、または水性アクリルによるマットな面など、ひとつの画面の中に異なったテクスチャーを混在させることにより、人を取り巻く環境にある様々な要素を表現している。浮遊感と洗練された雰囲気を併せ持つこれらの作品は、彼女の身の回りにある日常の断片を掬い上げたものでもある。
(1)…作家のステイトメントより。

 [文、原田桃望(アシスタント・キュレーター)] 

平井 志歩 HIRAI Shiho

美術工芸学科 総合造形コース 4年

クレートを思わせる6つの木箱の中には、様々なヒトから借りた品が入っている。それは平井志歩が特別ではない身近な人から借りた、そのヒトが最いつも持ち歩くモノである。まるでキュレーターのように振る舞う平井は、こうした展覧会内展覧会を通じて、コロナ時代におけるモノと人間の関係を観察している。モノの選択は作家自身ではなく、全て持ち主に委ねられている。こうした不確定な行為は、本作を見る観客に対しても自分の持ち物との関わり方を問いかけてくるだろう。

[文、楊昕鑫(アシスタント・キュレーター)]

高尾 岳央 TAKAO Takehiro

美術工芸学科 油画コース 3年

現代の私たちが日頃見ている景色の中には、文字が溢れ返っている。高尾岳央は、そのような身近にある文字や形を、木や山などの自然物と同じように風景の要素の一部として捉え、エアーブラシを用い風景画として描きだしている。一見、平面的なグラフィティーのように見えるものの、よく見ると画面には、近くに感じる場所、遠くに感じる場所が作り出されていたり、はたまた正面からみた建物の様な平面が作り出されている。そのようにして高尾は、空間的な「文字の風景」を画面に描くのである。

 [文、吉良穂乃香(アシスタント・キュレーター)]

戸田 樹 TODA Itsuki

美術工芸学科 総合造形コース 3年

小さな入り口から中に入ると目の前に階段が現れる。私たちはこれまでも階段をのぼった経験があるはずなのに、しかし、なぜかうまく登ることができない。それは、この階段の床が傾いているからである。物体、物質、場所、事象、人工物など、環境のなかにあるすべてのものは、私たちの知覚や行為を促す契機をつねに内包している。戸田樹の階段は、今までの経験の中で私たちが獲得し習慣化してきた感覚にズレを生じさせることによって、自らの身体感覚の有り様を意識させるのである。

  [文、吉良穂乃香(アシスタント・キュレーター)]

多田 照美 TADA Terumi

情報デザイン学科 ビジュアルコミュニケーションデザインコース 4年

この作品は2種類の映像で構成されている。一つは多田照美が町を歩いて、スマートフォンで人々の動きを撮影した映像。もう一つは撮影した人々の動きを抽出し、それを「型」として多田が「踊った」映像である。これまで重ねてきたリサーチやフィールドワークの経験と、多田が高校時代から身につけてきたダンサーとしての身体的な振る舞いから、生活を営む人の動きと、踊ることの定義を問い直す作品である。

[文、毛利風香(アシスタント・キュレーター)]

本田 莉子 HONDA Mariko

大学院 美術工芸領域 染織分野 修士課程1年

これまで一貫して「織る・縫う・染める」という行為の根源に向き合って作品制作を行ってきた本田莉子。今回は新たな試みとして作品と彼女が執筆したテキストを対にして展示を行う。「縫う」という行為へのリサーチから「縄文土器とアイヌ文様」「千人針」「ミラーワーク」という三つの物語をたて、それぞれ集めた記録をもとに作品を展開する。 

 [文、原田桃望(アシスタント・キュレーター)] 

▶︎作家によるステイトメント

Creative Thinking Project

プロダクトデザイン学科 2-4年 13名

Creative thinking projectとは、道具と人との新たな関係性について考えプロダクトデザインを行う、授業形式の実践的なプロジェクトである。今年度のテーマは、「カレンダーと私たちの新たな関係性」。プロジェクト・メンバーの12人は、テーマに応じたリサーチを行い、新たな関係性を生み出す道具をデザインした。COVID-19の影響で、家で過ごす時間や、1人の時間が増えたことにより、さまざまな人の時間の過ごし方や捉え方が変化しただろう。また、私たちは自分の時間をいかにコントロールし、過ごすかということを改めて考え直すきっかけも得ただろう。彼/彼女らがデザインしたプロダクトから、カレンダーと私たちのどのような関係性が見出されるだろうか。

[文、吉良穂乃香(アシスタント・キュレーター)]